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2013年6月
今では一般的となっている「フリーミアム」という手法、私がサービスを開始した2005年頃は「何のために事業してるの?」、「そんなのはサービスではない」、などとよく言われました。

「フリーミアム」とは、簡単に言えば無料でサービスを提供して、その中の一部の人に有料のサービスを販売したり、そこに人を集めることでメディアとしての広告を販売する、など無料サービスを利用した手法です。

その当時は当然、そんな言葉はありませんでしたが、そのようなやり方は昔からありました。
LinuxやGoogleがそうですし、マクドナルドのハンバーガー無料件などもそうです。
しかし、無料でサービスを提供するということには、ちょっとおかしいんじゃないか、という考えの方が大半でした。

小さなベンチャー企業が大手も相手にしながら割って入る方法として、本気で上を目指すならとらない手はないと言えるほど、その当時は有効な方法だと思いましたし、そうしたからこそ今このポジションを取ることができ、一つの事業として確立させることができたと思っています。
しかし、事業としての評価は冷ややかなものでした。


この方法が功を奏し、ニッチではあるけれど一つの市場を獲得することができましたが、それでもやはり必要となるのが収益化するビジネスモデルです。

今で言う「マネタイズ」というやつです。
どうやったら無料サービスから収益化していけるか、というやつです。


今回、この記事のタイトルに「ITベンチャーの失敗/複雑なビジネスモデル」としましたが、複雑なビジネスモデルが失敗要因ということを言いたいのではなく、むしろ逆で、複雑なビジネスモデルになることを受け入れて事業をしなかったことに、かなりの無駄と無理を生じさせたことに問題があったことを伝えたいと思いました。 ..ので書きます。

いつの時代も新しいもの、見えないもの、には疑いの目で見られ、市場に浸透して始めて認められるものです。
それを覚悟しているかどうかで、とる行動も変わってきますので、もし自分の中で見えているもの、想像しているものがあるならば、あまり周りの意見は聞かず、そちらを信じて進む方が良いと思います。(迷わずそうしていればよかったと思っています。)

仮に周りの意見を聞いて進めたとしても、一時的に多少稼げるサービスにはなるかもしれませんが、ありきたりの競争力を持たないサービスとなり、自分が描いていたイメージや目的からはかけ離れたつまらないサービスとなって終わるのがおちだと思います。
(それをビジネスとするなら別の話ですが)

特にこちらのビジョンや感じている可能性を理解しようとしない、収益だけが事業だとするベンチャーキャピタルの声には要注意です。
彼らは自分の利益に対するビジョンしかもっていなく、その物差しから外れることを極度に嫌います。
そこに行き着くための一手だとしても、彼らにはその理解ができないので、「今ある新しいもの」を勧めてきます。
しかし、ないものに対して試行錯誤して取り組んでいるベンチャー企業にとっては、それはもう古いものになっていて取り入れられないのですが、それを理解してはくれません。

新しいものをどんどん取り入れて儲かるビジネスを行うことがベンチャー企業というならそうなのかもしれませんが、それって本当にベンチャー企業なのでしょうか?

自分がイメージした新しい市場を想像して、新しい価値を創造する、そんな企業でありたいと思っています。

話がそれてしまいましたが、もし、私と同じように思い、挑戦していこうとするなら、ありきたりですが、自分の考えを信じて進めばいいのだと思います。
自分に自信をなくし、人の意見を取り入れて楽をしようとしたところに失敗がありました。
過剰な投資と投資すべきところに投資しなかった時間のロスが成長を止めてしまいました。

ただ、継続させていくためには収益が必要です。
更に発展していきたいときには更なる資金が必要です。

ここで柔軟な考え、複雑なビジネスモデルがありだということを受け入れて進むことがポイントになると思います。

その立ち上げたサービスから収益が上がっていくのが理想ですが、そうではない方法を考える必要があるかもしれません。
収益を上げないほうがいい場合もあります。
無理にサービスから収益を上げようとすると、せっかく立ち上がったサービスも崩れていくことがあります。
その労力に対するコストが何十倍にも膨れ上がることがあります。
むしろ、何もしないでアルバイトでもしていたほうが良かった、ということもあります。
そのサービスを活用して別の事業で稼ぐ、といった方法もあります。

それらは時代と環境の変化でどんどん変わります。
特にインターネットの業界は無料という究極の中での競争にさらされているので、その中に入っているなら一筋縄ではいかないところがあります。

ツイッターのビジネスモデルは広告モデルに向かっていますが、私はそうではないと思っています。
別のビジネスモデルに向かった方がいいと思っています。

きっと、これを聞いて、「いや、ツイッターがそう言うんだからそれがベストなんだろう」、「普通はそこで稼ぐだろう」、と思われるのではないかと思います。
そこに、失敗、あるいは遠回りをする要因があるということを言いたいのです。

環境はどんどん複雑になっています。
その複雑な中に対応していくビジネスモデルを考えること、そしてシンプルなビジネスモデルに作り上げること、それが目指すところになると思います。

そのためには複雑さを受け入れる、その中で見出した自分のやり方を信じて取り組んでいけるかどうかが問われる世界であるように思います。


複雑なビジネスモデルになる可能性があることを受け入れて、あなたなりの知恵で見出して欲しいと思います。
そして、そうやって見出したものは、いずれ「スタンダードなやり方」、と言われるようになります。

そんなもんです。

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結果オーライの世界なので、失敗とも言い切れませんが、今回のテーマは、「自信」と「過信」について、リスクを振り返りながら書いてみたいと思います。

今思うと、本当に危ない橋を渡っていたと思います。

幸いいろんな人に助けられ、一命だけはとりとめ、現在もチャレンジするチャンスをいただいています。

そのような危機的な状況に陥ったのは、様々な要因があったと思いますが、中でも一番影響したのが、この「過信」ではなかったかと思います。

過去を振り返り反省する前に言い添えておきますと、この「過信」があったからこそ乗り越えられたことも多々あり、表裏一体であるということも前提で聞いていただければと思います。

何か新しいことを始めようとしたときには一つの勇気が必要で、何かを捨てる覚悟も必要です。
そうやって、よし!これでいこう!と決めたものは、そこに集中して進んでいくので推進力を生んでいきます。

すると、それに興味を持つ人や評価してくれる人が現れ始めます。
また、その行動をとっているうちに、絵に描いていたものが少しずつ形になり始めます。

そこに自信を持ち、さらなる努力を続けると、自分の考えはどんどん整理されていき、本当にこれでいける!と思い、その頃にはより明確なビジョンと自負が生まれてきます。
そしてそこに身をささげる覚悟は更に決まります。

こっちが身を捧げてしまっているのですから、もう怖いものはありません。

是が非でも成功させることだけを考えます。
本気でやれば、やれないことはない、と考えます。

このときのパワーは、正直すごいです。
このパワーが普段では考えもしない、ありえない道を切り開いてしまう力にもなります。

これは時と場合によっては必要な力なのかもしれません。

しかし、大きなリスクにもなっていたことを今では強く感じているし、反省することも多々あります。

冒頭で書いたとおり、結果オーライの世界なので、何であろうがそのまま突っ走ってゴールまでたどり着ければOK、たどり着けなければお金も信頼も失い、大きな反動となって返ってくる世界です。

なので、何とも言い難いのですが、もう少し賢くやる方法もあったのではないかと思っています。

それは、自信と事業のコントロールです。

自信は何かをやる上で必要だし、成果が見えることで自信となり、また次の行動へとつながっていきます。
自信を失ったときが一番辛いし、一番怖いことでもあります。

逆に、自信が度を越え過信となったときは、自分を奮い立たせる頼もしい力となりますが、現実からは離れ、周りを巻き込みながらとても危険な状態に突入していくことになります。
これは、自分ではなかなか気付けないのでとても厄介な状態です。

それでは、どこまでが自信で、どこからが過信だったのか。
今思うと、ベンチャーキャピタルからの出資話が持ち上がり始めたあの辺かな?と思っていますが、それまでは事業への自信に満ちていたはずのものが、自分への自信が入り混じり、実態以上のものが手に入っていくという錯覚がおき始めていたのだと思います。

また、過信によって生まれた失敗は必ずその反動が形になって返ってきます。
自分にだけ返ってくるのならいいのですが、家族や社員、株主などのステークホルダーへ返ってきます。

「信頼」という関係で成り立たせてきたものが、信頼を失うと同時に多大な損害も与えてしまいます。
これは本当に耐え難い気持ちです。
自ら命を落としてしまう人の気持ちが分かります。


このような状況にならないために、人からの信頼を利用してしまうような「過信」の状態に陥らず、「自信」の中で事業を進めようとする心構えが必要だったと思います。

そしてこの自信を一つ一つ確かなものにしながら確信へとつなげ、次の自信を持ちながら力強く事業を進めて行きたいものだと思っています。

他人にも自分にも踊らされることなく、自信をもって挑戦を続けられる力が必要なのだと思います。



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※この記事は自分がITベンチャーとして進んできた中での体験から学んだこと、感じたことをそのまま綴っています。あくまで私個人の体験からの考えであり、私自身の性格や環境に大きく影響している部分が多くあります。一ベンチャー企業の経営者として感じたことを、これから起業しようとしている方、同じ境遇にいる方と共有していけたら嬉しく思います。
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先日の予告どおり、暴露談(?)を始めていきたいと思います。


第一回目となる今回、はじめに何を書こうかと考えましたが、最も失敗に起因してるなぁ、と感じたことを書こうと思います。

それは、ずばりタイトルの通り、「正しくやろうとしてはいけない」、ということ。

このためにずいぶん無駄な時間を費やしたし、遠回りもしたし、ひどい目にあったと思っています。

自分で言うのもなんですが、私自身、根が結構真面目です。
真面目に生きられているかというと、それはまた別の話ですが、「こうありたい」、「こうあるべきだ」みたいなものを必要以上に抱えてしまう癖があります。


ここに落とし穴があります。


また、学校教育の影響でしょうか、全てのものには答えがある、と思っています。


ここにも落とし穴があります。


ベンチャー企業は人には見えていないものを形にしていくことを事業としている企業です。
そのため、常に模索を続けるわけですが、その作業はとても地味で不安で心細い環境の中にいます。
自問自答を繰り返していく中で、少しでもヒントとなうようなものがあるようなら、それを掴み取りたくなる衝動に駆られます。

そんな中で、「正しい答え」、は最も魅力的で最も安心する材料として心の不安を埋める格好の材料になります。


正しい答えなら、きっと成功に導いてくれるでしょうし、心の支えにもなります。そして何より誰も文句を言わず、そのやり方を評価してくれます。


・・・実はこれ、最悪です。


そもそも、ここで言う「正しい答え」、はもう過去のものだし、前提が違います。
それは、その人の「正しい答え」であって、あなたのものではありません。

何も疑わずに純粋にまっすぐ進めば奇跡的にその通りの結果が得られるような気もしますが、必ず次の矛盾した「正しい答え」がやってきます。

正しい答えは外から与えられることはありません。
正しい答えは与えられずとも持っているもので、それで戦うしかないと思った方がいいです。


例えば、
「ターゲットを絞れ」

これを聞いて、
そうだ、そうだ、ターゲットを絞れば訴求しやすくなるし、合理的で効率的だ、我社もターゲットを絞って積極的に行動していこう!

こんな気分になると思います。

でももし、あなたの商品を欲しがる人を、あなたが見えていないとしたら一か八かの賭けでしかなくなります。
この人に、と思って売ろうとしたものが全く別のタイプの人に売れることだって多々あります。
そもそも、ターゲットを絞らない方がいいことだってあります。
事実、当社のサービスPINGOO!は老若男女、個人から大企業まで様々な方が使ってくれており、うまくやっています。
これを20代のアフィリエイターに絞って・・などとやっていたら事業の目的自体を見失ってしまいます。

ある程度市場がある中で事業をし、顧客をもっている企業であればこの教科書は頼りになるかもしれません。
しかし、商品も定まらず、先も分からないベンチャー企業にとっては、この常識は鵜呑みにできないはずです。

周りと同じように手段を選び、迷わず事業をしていきたいという気持ちは分かります。
でも、やっぱり正しい答えを探すのは諦めましょう。


私自身、何度もこれにはまってきたように思います。
それだと思って試してみるたび、一見うまくいくように感じでも必ず反動があり、いつまで経っても先に進めない、という状況になります。


そんなことより、自分がこうしたい!と思うことを人がなんと言おうとも意見も聞かず、どんなに非難されようとも実行していく方が何倍も増しで進歩できます。

その代わり、失敗も覚悟しなければいけません。
失敗も覚悟できるから挑戦ができているはずです。
挑戦していくからその先の可能性が見えてきます。

そんなことは、やっている本人にしか分かりません。


どんなに立派な経営書であっても、どんなに有名な講師のセミナーであっても、どんなに優秀なコンサルタントのアドバイスであっても、心の中に「正しくやればうまくいく」などという甘い気持ちがある以上、期待通りにならないどころか、害になります。

本当に立派な人のアドバイスは勇気と気付きを与えてくれます。
そういった人からの助言は自分の中にある、本当の意味で正しい答えを引き出してくれます。
私にも何人かおり、心の支えとなってくれています。

しかし、大半は自分の価値観を押し付けるだけの人たちです。
この人たちの話は聞いてはいけません。
ここに負けてしまうと正しい答えを探し始めるようになります。

運良く、自分を活かしてくれる素晴らしい人に出会えると加速できるのですが、世の中は正しさを求める声の方が圧倒的に大きいのが現状です。


この罠にはまらないようにするのは非常に難しいのですが、こういった罠があることを知りながら、良い人との出会いや自分を信じる勇気、それと、それらをかき消すだけの欲求をもって進んでいくことが、ベンチャー企業が進んでいくための必要条件になっていくのではないかと感じています。


「常識」や「正解」などという概念に囚われず、自分を信じて歩んでいきましょう。


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